放射性廃棄物関係法令集等

現行の政令濃度上限値を超える低レベル放射性廃棄物処分の基本的考え方について(抄)(平成10年10月16日)

原子力委員会 原子力バックエンド対策専門部会 (平成10年10月16日)

(中略)

3.対象廃棄物処分の基本的考え方

対象廃棄物の処分方策を検討するに当たって、安全を確保すること、及び、将来世代に負担を残さないという観点も踏まえ処分場跡地については一般的であると考えられる利用が制約されないようにすること、を基本的な考え方とする。

対象廃棄物の処分方策を検討するため、まず、現行の低レベル放射性廃棄物について実施されている処分と同様の浅地中のコンクリートピットへの処分を行った場合の一般公衆の被ばく線量について、現行の政令濃度上限値を設定した際に用いられた評価シナリオを適用して試算を行った。すなわち、廃棄物を地表面から深さ3mより下に設けられたコンクリートピットに処分し、300年の管理期間を置き、放射性核種の濃度の低減を図り、管理期間経過後について、以下の被ばく形態の検討を行った。

(i) 処分場跡地において住居を建設する人の被ばく
(ii) 処分場跡地において建設された住居に居住する人の被ばく
2)コンクリートピット埋設処分対象放射性廃棄物
(iii) 放射性核種が地下水とともに河川に移行しその水を介した被ばく

その結果、処分を開始する時点で放射線被ばくに大きく寄与すると考えられる短半減期の60Coなどは、本試算において仮定した300年の管理期間中に、現行の低レベル放射性廃棄物と同様その濃度が減少し、管理期間経過後に想定される上記(1)~(3)の被ばく線量への寄与は十分小さくなる。一方、これらに比べて半減期が長い63Niなどの核種が管理期間経過後の被ばくに主に寄与し、上記(1)から(3)の被ばく線量は、原子力安全委員会において示されている「被ばく管理の観点からは管理することを必要としない低い線量」である10μSv/y(以下「目安線量」という。)を超過するが、最大で数mSv/yのオーダーとなる。--注1)

したがって、対象廃棄物を安全に処分するためには、現行の低レベル放射性廃棄物処分と同様に地中の処分施設に埋設処分を行い、その後、放射性核種の濃度の減少に応じて放射性核種の施設からの漏出の監視や土地利用制限などの管理を数百年間--注2)行うことに加え、管理期間経過後も処分場跡地の利用に伴い、人間と廃棄物が接触し安全上問題となるような被ばくが起きないようにしておくとともに、放射性核種の地下水による移行が十分抑制されていることが必要である。
具体的には、管理期間中は、一般公衆の被ばく線量を、法令に定める線量限度を超えないことはもとより合理的に達成できる限り低く抑え、管理期間経過後は、上記(1)から(3)のような一般的と考えられる事象に対して「目安線量」である10μSv/yを超えないようにすることを基本--注3)として、処分場の管理期間中及び管理期間経過後を想定してそれぞれについて以下のような対策を講じることが必要であると考えられる。

(1) 管理期間中
(i) 対象廃棄物に含まれる60Co、137Csなどによる従事者及び一般公衆の外部被ばくを考慮して、廃棄物の埋設が完了するまでは、適切な放射線遮へいを設けることと一般公衆の接近を防止する管理を行う。
(ii) 廃棄物が埋設された後も、60Co、137Csなどの濃度が十分減少するまで、発生すると安全上問題となるような被ばくを生じる行為、すなわち処分施設に到達するボーリング調査など人間が廃棄物に接近する可能性のある行為を禁止し、人間が廃棄物に接触しないよう管理を行う。
(iii) 所要の期間、処分施設からの放射性核種の地下水による漏出と、生活環境への移行の監視なども行う。

(2) 管理期間経過後
管理期間経過後については、前述したように、安全上の問題が生じないとともに、将来世代に負担を残さないという観点も踏まえ処分場跡地の一般的であると考えられる利用が制約されないようにすることを基本的な考え方とする。このために、様々な人間の活動により人間が廃棄物に接触して生じる被ばくと、地下水による放射性核種の移行によって生じる被ばくに対し、廃棄物を埋設処分する時点で、次の対策を講じておく必要がある。
(i) 人間の活動によって発生する被ばくについて
住居の建設や居住のような一般的であると考えられる人間活動に対しては、それが処分場跡地で起こっても人間が廃棄物に接触することのないような処分深度を確保する。さらに、その他の事象についてもできるだけ起こることのない深度に処分することによって、人間が廃棄物に接触する可能性が十分小さく、かつ、万一人間が廃棄物に接触した場合でも安全上問題となるような被ばくが起きないようにする。
(ii) 地下水による放射性核種の移行による被ばくについて
地下水による放射性核種の移行については、地下水流速が十分小さい地中に処分施設を設置し廃棄物を処分することや、地質条件などによっては処分施設の核種閉じ込め機能をより高くすることにより、放射性核種の処分施設からの漏出や地中での移行を抑制する。
上記(1)及び(2)のような対策は、「5.管理期間中の管理のあり方」「6.管理期間経過後の安全確保」で後述するように、
(i) 現行の低レベル放射性廃棄物が処分されているコンクリートピットと同等以上の放射性核種閉じ込め機能を持った処分施設を、
(ii) 放射性核種の移行抑制機能の高い地中で、
(iii) 人間の活動によって人間が廃棄物に接触する可能性が十分小さいと考えられる地下数十m程度の深度へ設置することによって実現できるものと考えられる。

(中略)
1)自然放射線による被ばくは、空気中のラドンからのもの約1.3mSv/yを含めて、約2.4mSv/y(世界平均)である(1993年国連科学委員会報告より)。国内における地域差は約0.4mSv/yの範囲である(1988年放射線医学総合研究所調べ)。
2)具体的な管理期間の長さについては、処分される放射性廃棄物の種類と濃度によって安全上支障のない濃度以下に減少するまでの期間が異なるため、これを考慮して処分場毎に適切に設定される必要がある。
なお、現行の低レベル放射性廃棄物を浅地中のコンクリートピットに埋設処分する場合については、昭和63年原子力安全委員会「放射性廃棄物埋設施設の安全審査の基本的考え方」(解説)において、原子炉施設から発生する廃棄物中に含まれる放射性核種のうち、量が多く、処分施設の放射線防護上重要な60Co、137Csなどは、300∼400年経過すれば一千分の一から一万分の一以下に減少しこれらの放射性核種の量は極めて少なくなることや、外国における例も参考として、「有意な期間」内に終了し得る管理期間の長さとしては、300∼400年を目安として用いることとされている。
3)昭和62年放射線審議会「放射性固体廃棄物の浅地中処分における規制除外線量について」において、「特定の事象に対する個人線量の算定結果が10μSv/yを超える場合であっても、当該事象の発生頻度が小さく、その事象から受ける個人のリスクが十分低いときは、このようなケースについても規制除外する際の判断基準を満たしているものと考えるのが適当である」とされている。


6.1.管理期間経過後の人間の活動に対する安全確保

6.1.1.一般的であると考えられる地下利用に対して十分余裕を持った深度への処分
人間の活動については、現行の政令濃度上限値を定めた際に想定している地下数m程度の浅地中処分施設に対象廃棄物を処分した場合を想定すると、一般的であると考えられる土地利用として住居の建設工事などが行われると、目安線量を超える被ばくが生じる可能性がある。したがって、このような被ばくを防ぐためには、一般的であると考えられる地下利用に対して、十分な余裕を持った深度に処分することが必要である。また、これにより、一般的であると考えれらる土地利用が制約されないようにすることも重要である。

一般的であると考えられる地下利用の形態に、地上の構築物を支持する基礎の設置と地下室の建設がある。このうち大部分は住居などであり地下数mの範囲の利用である。

この他に、必ずしも一般的であるとは考えられないが、大都市部を中心に、高層建築物の基礎や深い地下室によって、これより深い深度までの利用が行われている。

将来、このような地下利用を制約しなくても人間が廃棄物と接触せず地下利用に伴う被ばくが起きないよう、処分施設はこのような地下利用をも避ける深度に設置されるべきである。

将来、このような地下利用を制約しなくても人間が廃棄物と接触せず地下利用に伴う被ばくが起きないよう、処分施設はこのような地下利用をも避ける深度に設置されるべきである。

高層建築物などの基礎の設置深度は、これを支えることができる支持層--注1)が存在する深さによって決まる。一方、地下室については現在例えば東京都における建築物の地下階の99.9%までが地下4階までであり--注2)、最も深いものでも地下30m(国会図書館—地下8階)となっている。

これらの地下利用の実態を踏まえ、処分施設を設置する際は、高層建築物の基礎が設置される支持層の上面又は地下室の深さに、これらを設置する地盤の強度などを損なわないために必要な離隔距離を確保することが必要であると考えられる。

また、地下鉄、上下水道、共同溝などの施設のために利用されている深度は、地表付近から順次利用が進んでいるが、大都市においても大部分は50m程度以浅である。このように、地下利用は深度に伴って急激に減少し、50m以深の利用は極めて少ない。

したがって、具体的な処分深度は立地場所の地質条件などにより異なると考えられるが、現在の大都市における地下利用の状況を踏まえても、支持層の上面よりも深く、これに基礎となる地盤の強度などを損なわないための離隔距離を確保し、例えば地表から50∼100m程度の深度の地下に処分すれば、住居建設などの一般的であると考えられる地下利用はもとより高層建築物などの建設を制約しなくても人間が廃棄物に接触することは避けられ、これに伴う被ばくは生じない。また、その他、地下鉄、上下水道、共同溝などのような利用を含めても、人間が廃棄物に接触する可能性は十分小さくなると考えられる。

(以下略)
1)建築物を支持することができる一定の支持力のある地盤。ここでは高層建築物の荷重を支えることができる支持層を想定。
2)「臨時大深度地下利用調査答申」平成10年より