11 論的な本質安全よりも、リスクを考慮した機能安全に よる安全確保の考え方が日常的に施設の設計に用い られております。それは対象とする施設等が複合化・ 複雑化するため、個別(要素)設備に加えて、施設 全体の安全に取り組む必要があるためだと考えます。 廃棄物施設の安全性の評価においては、個別設備 による多重化や評価期間ごとに状態変化があること、 廃棄物の放射能の減衰があることや作用が自然現象 を含むことなど不確実性が高く、さらに長期評価が 求められ、原因除去ができないため「本質安全」の 考え方の導入は困難です。従って、ヨーロッパでも 採用されているように、廃棄物埋設における機能安 全の手法の採用が大切かと思います。 そこで欧州を中心に廃棄物処分システムへの機能 安全の考え方が採用されており、そこでは要求事項 を明確にして、機能安全に関する基準に準拠した施 設設計、また、複数の個別(要素)設備を統合した 設計手法により許容可能なまでの線量の低減なども 行われています。 一方、わが国の安全評価手法では安全確保に対す る目標性能や性能評価指標が明確に示されていない。 すなわち、それぞれの評価期間に対する要求機能に 応じた要求性能、性能評価指標、性能目標値という 安全に係るクライテリアが不明確というところがあ るのではないかと思います。具体的に示せば、廃棄 物埋設の安全確保の論証では、母岩や人工物、考慮 されるべき作用としてプレートテクトニック、気候 変化、重力等がある。評価されるべき期間として現 在から超長期の数十万年、また、放射性核種も様々 存在する。さらに、安全を論証する機能も隔離、閉 じ込め、移行抑制、遮蔽とあり、これらの組み合わ せを含めて所定の性能を満足していることを示すこ とが求められる。こうした考慮されるべき事項が多 岐にわたっている場合の論証の方法として、機能安 全の手法が有効であると考え ています。 図9は廃棄物埋設施設の安 全確保を論証するため機能安 全の考え方に基づき網羅性を 鑑み必要な機能を抽出したも のです。この図は、先に示し 図4 の NORDIC に 準 拠 し て構造化を行っており、レベ ル1である「目的」、すなわ ち人と環境を護るという目的 に対して達成するために必要 なレベル2の「安全機能」を 全体系的に示したものです。 まず廃棄物埋設では、「地盤 環境の安定な場所を選定す る」 8) ことが最重要で、そのために機能を擾乱する 事象(自然事象、人為事象等)から影響を排除する ため放射性廃棄物を生活環境から隔離するという「回 避する」ことが求められます。次に安全性能を満た すように必要となる母岩を含んだ構成部材等の設計 を行うことであり、放射性物質を閉じ込める、移行 抑制する、放射線を遮蔽するという機能に対して「設 計する」ことになります。そして構成部材の性能が 適切に機能していることを影響評価するという、ま た環境中に放出された放射性物質の移行、影響緩和 に関する「評価する」の3つを全体系に考える必要 があります。このように、この図は安全確保を論証 する全体像を必要な機能の観点から示した機能安全 の考え方を形にしたものです。 図10 は、フィンランドのオンカロの安全性の評価 で行われている機能抽出の事例を示したものです。 図9で示した処分場が備えるべき3つの機能(臨界 防止をいれると4つになりますが)に対して満たす べき性能が構造化され示されています。すなわち、 閉じ込めに関する機能に対して部材の性能、影響緩 和機能に対して環境への希釈・分散を遅延する性能、 発生防止に関する機能に対して自然事象から隔離す る性能や関連して処分場及び構成部材に対する性能 等が示されています。このように求められる性能を 考える場合には、対象となる処分場の部材等の明確 化や性能が求められる期間・目標性能などを明確に する必要があります。そうした点でこの図はわが国 の安全確保の体系化に非常に役立つと考えています。 4.施設設計における性能(照査)設計の導入 次に、性能規定方式に基づく施設設計における性 能(照査)設計の導入について話します。図11 は、 国等の法階層の体系を示したものであります。左の 三角図の法律、政令等、省令・規則等という「国等 図9 安全確保を論証する全体像