8 データを用いて累乗近似(m S_BASE = αt β )した。 係数αは、試験開始から1日経過した時点の総 流出量を表しており、初期流量との相関性が確認 できる。係数βは、経過時間 t あたりの総流出量 の変化を示しており、初期流量に関わらず一定の 値を示す。係数αには初期流量を引数とした関数 (α=0.015Q+0.30, Q は初期流量(mL/min))を、係 数βには平均値(β=1.5)から設定した。 以上から、T1期間の総流出量を式(3)で表現する。 T2 期間の総流出量の定式化についても、累乗近似 (m S_BASE = γt δ )での表現を試みた。T1 期間と T2 期間の不連続部のずれを解消する必要がある。すな わち、変曲点 T a (日)における総流出量(係数γ′) の値について、T1 期間と T2 期間における各式で得 られる値を連続的に整合させる必要がある。 係数γ′の値を式(4)で t=T a とした時の値とすれ ば、試験開始から1日経過した時点の総流出量γと 係数γ′の間には、γ '= γT a δ の関係が成り立つこ とから、定式化に必要となるγは式(5)を用いて決 定することができる。 T2 期間における係数δは、総流出量と経過時間の 傾きを表しており、図9に示す T2 期間のデータを 用いて累乗近似で取得した。係数δと初期流量との 関係は、初期流量に関わらず一定の傾きを示す。 したがって、係数γは式(5)で求めることとし、 係数δには平均値(δ=0.13)を設定した。以上から、 T2 期間の総流出量を式(6)で表現する。 なお、全試験ケースで取得された変曲点 T a の発 現タイミングは、図9に示すようにばらついており、 緩衝材表面の不均一な膨潤挙動などが要因と考えら れる。今回の試験ケース数では、流量との関係性が 明瞭化できていないため、ここでは全試験ケースで 取得された T a の平均値(T a =11.5)を設定した。 さらに、ベースモデルから原位置流出試験スケー ルへの拡張を試みた。スケールについては、緩衝材 と孔壁が接触する面積(以下、接触面積という)の 比率でアップスケーリングさせる。すなわち、ベー スモデルにおける接触面積 4.0 × 10 -3 m 2 に対する 原位置流出試験のスケールにおける接触面積 9.1 × 10 -1 m 2 の面積比 228 倍を、ベースモデルで推定した 総流出量 m S_BASE に乗ずることで表現する。 なお、水質及び縦横の違いによる影響(要素試験 はイオン交換水、横向き)については、試験の再現 性や信頼性を得るための試験点数が確保されていな いため、本検討では、水質及び縦横の違いによる効 果(影響)は、ベースモデルの拡張に反映していない。 2. 10 緩衝材の流出量評価モデルの適用性確認 前章で構築した流出量評価モデルと原位置流出試 験結果を比較し、モデルの適用性を確認した。 図10 に原位置流出試験結果ならびに流出量評価 モデルと Erosion model による評価結果を示す。評 価期間 t は、NUMO-SC に示される新第三紀堆積岩 類において想定されている284日と設定した。なお、 原位置流出試験の試験期間は 125 日であるが、40 日以降、流出が停止しているため、125 日以降もこ の状態が持続するものと仮定した。流出量評価モ デルによる総流出量は、試験開始から4日までは、 原位置流出試験と同じ軌跡を示すが、4日から 10 日程度まで立ちあがり、その後、漸増する挙動を示 す。Erosion model の総流出量も同様に試験開始か ら 10 日程度までは、原位置流出試験と同じ軌跡を 示すが、それ以降も上昇傾向を示す。評価期間 284 日後における総流出量は、原位置流出試験が 2,453g に 対 し て、 流 出 量 評 価 モ デ ル は 5,054g、Erosion model は 263,697g となった。以上の結果から、定 水位条件による要素試験に基づいて緩衝材の流出 量評価モデルを開発したことで、定流量条件による 要素試験に基づく Erosion model と比較して原位置 流出試験による総流出量の経時変化の傾向がより 再現できる様になった。また、Erosion model は原 図9 要素試験結果の例(初期流量:20mL/min) m S_BASE (0.015Q+0.30)t 1.5 …………………………(3) γ' (0.015Q+0.30)Ta 1.5 ………………………………(4) γ γ'/T a δ ………………………………………………(5) m S_BASE =(0.015Q+0.30)T a 1.37 t 0.13 ……………………(6)