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◎放射性廃棄物の管理
ロシアで発生する放射性廃棄物は、採鉱・燃料加
工・原子力発電所の運転・使用済燃料の再処理と
いった核燃料サイクルのプロセスに伴い発生する廃
棄物、医療・産業・研究活動に伴う廃棄物、原子力
施設の廃止措置や汚染された地域の環境修復に伴
い発生する廃棄物があります。2016 年末時点でロシ
アに蓄積された低レベル・中レベル・高レベル放射性
廃棄物の総量は、固体状・液体状を含めて約 5 億 6
千万立方メートルと見積もれられています。これらの
放射性廃棄物はロシア連邦の 50 の地域において、
174 の企業の 897カ所の一時貯蔵施設、及び 3カ所
の液体廃棄物注入施設において貯蔵されています。
また、各原子力発電所や、マヤーク等の施設にお
いて様々な種類の放射性廃棄物は再溶融、ガラス固
化、焼却、セメント固化等の処理が行われています。
◎放射性廃棄物関連の法整備状況
ロシアにおける原子力分野の活動及び原子力
利用の分野の許可活動を規制する安全規制機
関として、ロシア連 邦 環 境・技 術・原 子 力監 督局
(Rostekhnadzor)が 2004 年に設置されています。
放射性廃棄物管理に関する活動には同局の許認可
が必要です。
ロスアトム社の放射性廃棄物管理計画をサポートす
るための法整備が進められており、2011 年 7 月に「放
射性廃棄物管理法」が制定されました。この法律に
おいて、高レベル放射性固体廃棄物と長寿命中レベ
ル放射性固体廃棄物は地層処分し、低レベル放射性
固体廃棄物と短寿命の中レベル放射性固体廃棄物
は浅地中処分することが定められました。また、同法
で規定された安全で経済的な放射性廃棄物管理を
実施する国家事業者として、2012 年 3 月に国営企業
ノオラオ(NO RAO)が設立されました。国営企業ノ
オラオの役割は囲みに示されているように定められて
います。
放射性廃棄物管理法では廃棄物発生者が処分の
ための費用を特別基金に積立をすることについても
定めています。
なお、放射性廃棄物管理法の適用範囲外としてい
る使用済燃料の管理については、ロスアトム社が使
用済燃料管理に関係する法整備を別途計画してい
ます。
◎処分方針と実施体制
制定された「放射性廃棄物管理法」に基づき、放
射性廃棄物の処分計画は、国内の原子力関連企業
を束ねる国営原子力企業ロスアトム社が主導して検
討しています。ロスアトム社の前身はロシア連邦原子
力庁ロスアトムであり、2007 年に改組されて同じ名称
の国営企業に変わりました。
放射性廃棄物の発生者は放射性廃棄物を中間貯
蔵し、国家事業者が受入可能な状態に廃棄物を処
理することとしています。国家事業者は発生者から廃
棄物を受け入れて処分を実施します。放射性廃棄物
管理法では発生者が中間貯蔵する廃棄物の量や貯
蔵期間について制限することを定めています。
ガラス固化体の処分についてノオラオ社は、クラス
ノヤルスクの鉱業化学コンビナート(MCC)に近いエ
ニセイスキー(Yeniseysky)と呼ばれる場所に地下
研究所を建設し、最終処分場を立地する計画です。
このサイトには、ニジュネカンスキー花崗岩塊と呼ばれ
る岩盤が存在することが知られています。ノオラオ社
は 2018 年に地下研究所の建設作業を開始しており、
今後、そこでの地下特性調査や人工バリア等に関す
る現場での処分技術開発、設備・装置・掘削工法
の設計や試験を行うことによって、2029 年までにこの
場所に高レベル放射性廃棄物を処分するかどうかを
決定することとしています。
なお、低中レベル放射性廃棄物については、スヴェ
ルドロフスク州ノヴォウラリスク市のロシア初となる浅地
中処分場(PPZRO)において 2016 年より処分がなさ
れています。さらに、トムスク州セベルスク市とチェリャ
ビンスク州オジョルスク市においても低中レベル放射
性廃棄物の浅地中処分が予定されています。
放射性廃棄物管理法によって定められた
国家事業者の役割
○処分のために引き受けた放射性廃棄物の防護と安全性
確保
○放射性廃棄物処分施設の操業と廃止措置
○放射性廃棄物処分施設の設計と建設
○放射性廃棄物の発生量の分析と予測、及び放射性廃棄
物管理インフラの開発
○放射性物質と放射性廃棄物の財務と管理に関する国家
システムのための技術と情報支援
○ロシア連邦法に基づくその他の活動
ロシアにおける地層処分 >>>