放射性廃棄物関係法令集等

高レベル放射性廃棄物の地層処分研究開発の今後の進め方について(抄)(平成9年4月15日)

原子力委員会 原子力バックエンド対策専門部会 (平成9年4月15日)

第1部 基本的考え方

第1章 概説
高レベル放射性廃棄物は、当初は放射能が高く発熱量も高い状態にあるが、30~50年で埋設可能な発熱量となり、含まれる大部分の放射性物質の放射能は数百年の間に急速に減少する。一方、一部の放射性物質は放射能は低いものの寿命が長いため、長期にわたって放射能が存在する地層処分は、このような特徴を有する高レベル放射性廃棄物をガラス固化体という安定な形態とし、人の生活圏から離れた深地層中にそれを安全に埋設することによって、人間環境に有意な影響を及ぼさないようにする措置である。

深部の地質環境は、一般に地表近くの環境に比べ極めて長期の地質学的時間にわたり安定であると考えられている。したがって、処分場として適切な地点を選べば、放射能レベルが高い期間や、その後の期間においても、埋設された廃棄物が人間環境に有意な影響を及ぼさないようにすることができると考えられる。この際、深地層に存在すると想定される地下水の中に放射性物質が溶出する可能性について考慮しておくことが重要であり、このために多重の防護系(多重バリアシステム)を設けるのが基本的な考え方である。この考え方は高レベル放射性廃棄物の地層処分を検討している各国に共通のものである。

本専門部会は、動燃事業団が関係研究機関の協力を得て2000年前までに公表することとしている第2次取りまとめに向けて、基本となる技術的考え方と第2次取りまとめに盛り込まれる事項及び第2次取りまとめに向けて実施すべき技術的重点課題について以下のとおり審議した。
まず、地層処分の技術的信頼性に深く関わる地質環境の長期安定性について、とくに変動帯に位置するわが国の地質学的条件を念頭に、地層処分による安全確保に関連する時間スケールについて審議した。次に、地層処分システムの長期間にわたる安全性を解析評価するにあたり、その方法論、とくに時間の経過に対応させた評価と安全指標をどのように考えるべきかを審議した。
さらに、処分場の管理について技術的な観点から審議するとともに、処分事業を進める上での処分予定地の選定や安全基準の策定などに際して技術的拠り所とするために第2次取りまとめに盛り込むべき技術的事項について審議した。また、第2次取りまとめが広く国民に理解され信頼を得るために考慮すべき研究開発の透明性や評価のあり方についても審議した。
最後に、第2次取りまとめにあたっての技術的重点課題を具体的に審議した。これについては本報告の第2部にまとめて示した。

以下に本報告の概要を示す。

1.地質環境の長期安定性
わが国は変動帯に位置しているが、天然現象の中で、地震・断層活動・火山・火成活動などの急激な現象については、これまで長期にわたり限られた地域で起こっており、活動及び活動範囲の移動は規則的に推移しているため、その影響をうけない地域の地下深部に処分施設を設置することが可能と考えられる。また隆起・沈降・侵食、気候・海水準変動などの緩慢・広域的現象については、その変化の規則性が過去の地質学的記録から類推できるため、長期にわたりこれらの影響や範囲を推定することが可能と考えられる。このような考え方に基づき、天然現象が地層処分システムへ及ぼす可能性のある影響の性質やその範囲に関する知見を得るための研究の進め方について示した。

2.地層処分システムの安全評価
第1に、地層処分システムの安全評価にあたって、高レベル放射性廃棄物による人間環境への放射線の影響について、地下水を介して人間に影響が及ぶ場合と、将来の人間活動あるいは天然現象により人間と高レベル放射性廃棄物との物理的距離が接近する場合の2つを考えておくことが必要であることを示した。
第2に、地層処分システムの安全評価を行う際の時間スケールについて、人間環境の長期的な変化、地質環境の長期安定性及び放射線源としての高レベル放射性廃棄物の特性の観点から検討し、第2次取りまとめにおいては、地層処分システムの安全評価として時間スケールを限ることなく放射線量の評価を行うことが適切であることを示した。
第3に、安全評価の指標として、放射線量を基本とし、それに対応した線量基準としては諸外国の例を参考とすべきことを示した。また、遠い将来については天然の放射線レベルに有意な影響のないことを確認するための補完的評価指標についても検討すべきであることを示した。

3.処分場の管理
処分場の地質環境と地層処分システムの状態を監視し安全性を確認するため、建設から閉鎖までの各段階に取得すべき情報、計測方法、所要の措置などの処分場の管理に係る技術的検討を行うべきことを示した。

4.処分予定地の選定と安全基準の策定に資する技術的拠り所
予定される処分事業に第2次取りまとめの成果を適切に反映し事業の安全かつ円滑な推進に資することが重要であり、とくに、処分予定地の選定及び安全基準の策定に資する技術的拠り所について、第2次取りまとめに盛り込まれるべき項目を整理して示した。

5.第2次取りまとめに対する透明性の確保と評価の考え方
第2次取りまとめに向けた今後の研究開発の推進にあたって、国民の理解と信頼を得つつその推進を図るために、研究開発の進捗に応じて成果を積極的に公表するとともに国際的なレビューを受けるべきことを指摘し、第2次取りまとめに対する国による評価のあり方を示した。

6.第2次取りまとめにあたっての技術的重点課題
第2次取りまとめの成果が、わが国における地層処分の技術的信頼性を示すとともに、その後の研究開発及び処分事業の推進に適確に反映されるため、地層処分研究開発及びその基盤となる深部地質環境の科学的研究について個別目標と重点課題を具体的に示した。
また、動燃事業団を中核として関係研究機関が適切な役割分担と協力の下に、2000年の第2次取りまとめに向けた協力を一層強化すべく「研究調整委員会」(仮称)を発足させることとし、総力を挙げて研究開発を加速して進める必要があることを強調した。また、海外との緊密な研究協力、研究成果の平易で積極的な公表、研究施設の充実、人材の養成などの必要性についても指摘した。

(以下略)