放射性廃棄物関係法令集等

商業用原子力発電施設の廃止措置に向けて(抄)(平成9月1月14日)

総合エネルギー調査会 原子力部会報告書 (平成9月1月14日)


IV 解体廃棄物処理処分に係る課題

(中略)

2.解体廃棄物の処理処分の基本的方向性

(1)低レベル放射性廃棄物

原子力の開発利用に伴い発生する放射性廃棄物については、含有する放射性物質の濃度に応じた合理的な処分の方法を策定することが放射性廃棄物処分政策の基本である。商業用原子力発電施設の廃止措置に伴い発生する放射性廃棄物の処分は、かかる処分政策に従って実施されることが重要である。商業用原子力発電施設の廃止措置に伴い発生する放射性廃棄物の観点から、かかる処分政策の整備状況を整理すると以下のとおりとなる。

1)素掘トレンチ埋設処分対象放射性廃棄物(極低レベル放射性廃棄物)
極低レベル放射性廃棄物のうちコンクリート廃棄物については、既に制度整備が終了しており、素掘トレンチによる処分が実施可能である。これは、平成8年3月に解体を終了した日本原子力研究所のJPDRでの解体においても経験がある。
一方、残りの金属廃棄物等については、現在までに安全規制の基本的考え方が示されているが、今後、処分場における放射性物質濃度上限値、個別処分施設の安全審査方法、関係技術基準等の整備が残されている。このように、今後整備すべき課題はあるものの、いずれもコンクリート廃棄物の制度整備において経験のある分野であり、特段の問題は存在しない。したがって、従来からの努力を継続し、制度整備を確実に推進することが重要である。

2)コンクリートピット埋設処分対象放射性廃棄物
コンクリートピット埋設処分対象放射性廃棄物の埋設処分については、既にほとんどの制度整備が終了している。ただ、タンク類やポンプなどの大型金属廃棄物について、それ自体を頑丈な容器として利用して一体処分とすることが合理的であり、このために、開口部の密閉方法に関する基準化が残されているが、制度整備上大きな問題は存在しない。

3)コンクリートピット埋設濃度上限値を超える放射性廃棄物(高βγ低レベル放射性廃棄物)
高βγ低レベル放射性廃棄物の処分方策については、昭和60年10月の原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会の報告書において、「今後更に調査検討を進めていく必要がある」とされたが、これまで処分概念は確立されておらず、制度は整備されていない。
高βγ低レベル放射性廃棄物は、運転中の原子力発電施設においても、定期検査時等において使用済制御棒等が発生し、現在は施設内に保管されているが、このような原子力発電に直接関係する放射性廃棄物については、廃止措置に伴う高βγ低レベル放射性廃棄物の発生を待つまでもなく、その処分制度を早急に整備すべきである。

(2)放射性廃棄物として扱う必要のない廃棄物

放射性廃棄物は、これに含まれる放射性物質の濃度に応じ安全かつ合理的に処理処分されることが重要である。このため、例えば低レベル放射性廃棄物の処分に際しては、廃棄物をコンクリート製のピットに収納し放射性物質の拡散を阻止するとともに、人間社会との離隔距離を適切に確保することにより放射性物質による人間環境への影響を防止するための対策が採られている。
一方、日本人が自然界の放射性物質等から年間に1,100マイクロシーベルト程度(ラドンによる肺の被ばくを除く)の被ばくをしていることを勘案すると、放射性廃棄物に含まれる放射性物質の濃度が十分低くなり、特段の対策を施さなくとも放射性廃棄物の人間環境に対する影響が無視し得るほど小さくなる放射性物質の濃度が存在するはずである。
かかる放射性物質の濃度はクリアランス・レベルと呼ばれ、昭和59年8月の原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会の報告書でも、放射性廃棄物に含まれる放射性物質の濃度が極めて低く、人間環境への放射線による影響が全く考慮する必要のないレベルとして一般区分値(クリアランス・レベル)の概念を設ける必要があるとの基本的考え方が示された。しかしながら、今日までかかる制度整備は未だなされていない。
諸外国においては、ドイツ、イギリス、スウェーデン、フィンランドにおいて既に汎用的な基準を定めているのをはじめ、アメリカ、カナダ、ベルギー、フランスにおいては、個別申請及び審査においてクリアランス・レベルを設けている。現在解体中か解体済みの原子炉はアメリカ、イギリス、ドイツ等世界で15基程度あり、このうちクリアランス・レベルに係る制度を設けずに解体したのはJPDRだけである。また、このように主要国においては制度が整備され、リサイクル材料又はこれを利用した製品の国際流通も現実化していくこと等を踏まえ、国際原子力機関(International Atomic Energy Agency)においては、国際的なクリアランス・レベルについての検討が進められている。
原子力発電施設の運転に伴っても、放射性廃棄物として扱う必要のない廃棄物は発生している。また、商業用原子力発電施設の廃止措置に伴っても、同様の廃棄物が発生する。今後、仮にクリアランス・レベルに係る制度が整備されなかった場合には、本来放射性廃棄物として扱う必要のない廃棄物が低レベル放射性廃棄物と混在されて処分されたり、再利用可能な資源が廃棄されることとなることから、環境負荷を増大させるのみならず、放射性廃棄物の処分費用をも不必要に上昇させることとなる。
以上のような観点から、クリアランス・レベルに係る制度を早急に整備することが、放射性廃棄物の合理的な処理処分方策における課題となっている。なお、今後の検討と所要の制度整備並びにその運用を進めるに当たっては、一般的な産業廃棄物やリサイクルに係る制度等との関係について、厚生省、科学技術庁等関係省庁との調整・連携を図ることが必要である

(以下略)