放射性廃棄物関係法令集等

放射性固体廃棄物の浅地中処分における規制除外線量について(昭和62年12月)

放射線審議会基本部会 (昭和62年12月)

はじめに

原子炉、RI施設等の運転に伴い発生する低レベル放射性固体廃棄物、今後の原子炉の解体等により大量に発生することが予想される低レベル放射性固体廃棄物等について、現在、その放射能レベルに応じた種々の処分方策が検討され、その一部については浅地中に埋設処分する計画が推進されているところである。

このような放射性固体廃棄物の処分については、その処分に起因する一般公衆の被ばく線量が、被ばく管理の観点からは考慮する必要のない低い線量であれば、放射線障害防止の観点からの規制除外が考えられ、これを導入した安全規制の考え方については、すでに、「低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制に関する基本的考え方について」(昭和60年10月原子力安全委員会決定)の中で示されているところである。

また、国際放射線防護委員会(ICRP)はPub.46「放射性固体廃棄物の処分に関する放射線防護の諸原則」(1985年7月)において、放射性固体廃棄物の処分における規制除外の考え方を示し、国際原子力機関(IAEA)においても「放射線防護基本安全基準からの規制除外の一般原則に関する上級専門家グループによる声明」(1985年4月)を発表している。

このような状況に鑑み、放射線審議会基本部会において、我が国における放射性固体廃棄物の処分に関する規制除外について、このような報告書を参考にしながら慎重に検討を行い、その結果、浅地中処分における規制除外の線量について次のような結論を得たので報告する。

1.放射線防護の基本原則について

ICRPは、Pub.26において放射線防護の目標を達成するため、次の三つの要件、 (i)行為の正当化——いかなる行為もその導入が正味でプラスの便益を生むものでなければ、採用してはならない。 (ii)放射線防護の最適化——すべての被ばくは、経済的及び社会的な要因を考慮に入れながら、合理的に達成できるかぎり低く保たれなければならない。 (iii)個人に関する線量限度——個人に対する線量当量は、委員会がそれぞれの状況に応じて勧告する限度を超えてはならない。 からなる線量制限体系を勧告している。 この放射線防護の考え方は、放射性固体廃棄物の処分にも適用されるべきであると、ICRP Pub.46において述べられているところである。このうち正当化については、Pub.46に放射性固体廃棄物の処分は核燃料サイクル全体として正当化されるべきものであると述べられているので、ここでは、線量限度と最適化の適用について検討することとした。

2.個人に関する線量限度と我が国の浅地中処分における規制除外線量について

(1)個人に関する線量限度

ICRP Pub.46は、放射性固体廃棄物の処分に起因する個人の被ばく線量についても、1985年のICRPのパリ会議の声明で示された線量限度が適用されるものであり、さらに、この被ばく線量は、自然放射線及び医療被ばくを除くその他の線源からの可能性のある被ばくを考慮に入れて、線量限度を超えないことを保証するものでなければならないと述べている。

(2)規制除外の際の個人線量に対するICRP等の考え方

ICRPは、Pub.46において、規制除外の規則を導き出す一つの方法として、それ以下では放射線防護の配慮を必要としないような個人線量あるいはリスクのレベルを設定することを提案している。
また、同報告書において、このような個人線量は、放射線量が非常に低いため、被ばくした個人にとって無視できるとみなしてよいようなリスクしか持たない線量域に相当すると述べられており、具体的には、このようなリスクは、個人が自分の行動を決定する際に考慮に入れないリスクレベル(10-6/年のオーダー)に相当するものとし、丸めた線量効果係数を用いると、100マイクロシーベルト/年のオーダーの年個人線量に相当することを示している。
さらに、同報告書は、個々の放射性固体廃棄物の処分について規制除外する際の線量評価上の判断基準としては、上記の年個人線量100マイクロシーベルトを10マイクロシーベルトに低減することによって、現在あるいは、将来において複数の規制除外された線源から被ばくする可能性を考慮することができるとしている。
なお、IAEAの上級専門家グループによる声明においても、同様の考え方に立ち、年個人線量約10マイクロシーベルトが提案されている。

(3)我が国の浅地中処分における規制除外線量

現在及び将来における複数の線源や活動から被ばくする可能性を考慮しても、公衆が、線量限度を超えて被ばくすることがないように、規制除外した放射性固体廃棄物に起因する被ばくについては、その算定結果が、線量限度に比較して十分小さ〈、被ばく管理の観点から考慮する必要のない低い線量になるようにする必要があると考える。
従って、我が国における放射性固体廃棄物の浅地中処分において放射線障害防止の観点からの管理を規制除外する際には、上に述べた考え方に立って判断することが適当であり、その判断の基準とすべき線量(以下「規制除外線量」という。)としては、ICRP Pub.46とIAEA上級専門家グループによる声明において提案されている個人線量に準拠して、10マイクロシーベルト/年を用いることが妥当である。
なお、原子炉の解体等に伴って発生する金属等の放射性廃棄物を一般杜会に還元し、再利用する場合の基準については、今後の再利用の方法・用途等の検討を踏まえつつ、検討することが適当であるが、その設定に当たっては、上記の規制除外線量と同様の考え方が適用できるものと考える。

(4)規制除外線量に関する留意事項

(i)上記この規制除外線量が個人にとって無視できるとみなしてよいようなリスクレベルを基礎にしていることに鑑み、特定の事象に対する個人線量の算定結果が10マイクロシーベルト/年を超える場合であっても当該事象の発生頻度が低く、その事象から受ける個人のリスクが十分低いときは、このようなケースについても規制除外する際の判断基準を満たしているものと考えるのが適当である。

ii)放射性固体廃棄物の浅地中処分についての規制除外線量10マイクロシーベルト/年は、ICRPとIAEAが述べているように、現在又は、将来における規制除外された線源の重畳を考慮して設定されたものであるので、将来再利用が実現した場合に、改めてこの線量を見直す必要があるものではない。

3.規制除外における最適化について

放射線審議会は、ICRP Pub.26の国内制度への取り入れについての意見具申において、放射線防護の「最適化」の原則に十分配慮するよう求めている。放射性固体廃棄物の処分について規制除外する際にも、規制除外された廃棄物に起因する公衆の被ばくが合理的に達成できる限り低くなるよう最適化の観点から処分方法のあり方等について考慮が払われるべきである。


(注1)本報告書で使用している「線量」という用語は、体外被ばくからの実効線量当量と、放射性物質の摂取からの預託実効線量当量の合計である。
(注2)本報告書で使用している「個人」とう用語は、公衆の構成員としての個人をいい、放射線作業者は含まない。
(注3)本報告書で使用している「リスク」という用語は、ある潜在的な危険が顕在化する確率と、その危険によって個人が重篤な健康影響を受ける確率とを考え合せたものである。
(注4)10マイクロシーベルト/年は、自然放射線からの平均的な1年間の被ばく線量の1%以下に、また、ICRPが1985年のパリ会議声明で示した公衆の線量限度1ミリシーベルト/年の1%に相当する線量であり、自然放射線の地域的及び時期的な変動の範囲内に十分含まれるものである。