放射性廃棄物関係法令集等

放射性廃棄物埋設施設の安全審査の基本的考え方(昭和63年3月17日)

原子力安全委員会決定(昭和63年3月17日)
一部改訂 平成5年1月7日

まえがき

本基本的考え方は、放射性固体廃棄物(以下「廃棄物」という。)の埋設施設の安全性を評価する際の考え方について、当初、「低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制に関する基本的考え方について」(昭和60年10月24日原子力安全委員会決定)を基本に、「低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制に関する基準値について(中間報告)」(昭和62年2月26日原子力安全委員会決定)を踏まえ、当時計画されていた廃棄物埋設施設を念頭において、他の原子力施設における安全性の評価の考え方、諸外国における廃棄物埋設施設の安全性の評価の考え方も参考とし、昭和63年3月17日に決定された。

その後、廃棄物埋設施設の安全審査の経験、「低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制に関する基準値について(第2次中間報告)」(平成4年6月18日原子力安全委員会了承)の策定等を踏まえ、今般、当面の対象として考えられる廃棄物埋設施設を念頭において、本基本的考え方の見直しを行った。

なお、本基本的考え方については、今後、新たな知見と経験の蓄積により、必要に応じて見直しを行うものとする。

〈解説〉
本基本的考え方は、以下に述べるような廃棄物埋設事業の安全確保上の特徴を踏まえて作成したものである。
(1)廃棄物埋設事業として行われる埋設の方法による最終的な処分についての安全確保の考え方については、前述の「低レベル放射性固体廃棄物の陸地処分の安全規制に関する基本的考え方について」に示されたところであるが、これは、原子力施設から発生する廃棄物を浅地中に埋設した後、放射能の低減により被ばく管理の観点からは埋設した場所の管理を必要としないものと認められるまでの間、一般公衆に与えるおそれのある放射線被ばくの程度等を勘案しながら所要の管理を行い、安全に処分しようというものである。

(i)人工構築物を設置した廃棄物埋設施設に埋設する場合

1)第1段階 周辺監視区域を設け、当該区域への立入りを制限するとともに、埋設保全区域を設定し、巡視及び点検を実施する。 また、廃棄物埋設地に設けた人工バリアから放射性物質が漏出していないことを放射性物質の漏出等の監視によって確認するとともに、万一、漏出が認められた場合には、その補修等所要の措置を講じる。 2)第2段階 周辺監視区域を設け、当該区域への立入りを制限するとともに、埋設保全区域を設定し、巡視及び点検を実施する。 3)第3段階 埋設保全区域を設定し、巡視及び点検を実施するほか、当該区域での農耕作業等の特定行為の制約又は禁止を行う。

(ii)人工構築物を設置しない廃棄物埋設施設に埋設する場合

1)埋設段階 周辺監視区域を設け、当該区域への立入りを制限するとともに、埋設保全区域を設定し、巡視及び点検を実施する。 また、廃棄物埋設地から生活環境に移行する放射性物質の濃度等を地下水の測定の実施等により監視する。 2)保全段階 埋設保全区域を設定し、巡視及び点検を実施するほか、当該区域での農耕作業等の特定行為の制約又は禁止を行う。 したがって、管理期間内に係る廃棄物埋設施設の安全性の評価は、以上に述べたような段階管理の内容に応じて、また、廃棄物埋設地の設備は時間の経過に伴ってその機能が劣化することを考慮して実施する必要がある。 (3)また、廃棄物埋設事業は、前述したような段階の管理を経た後、最終的には、管理を必要としない段階へ移行することを予定しているので、有意な期間内に管理を必要としないような状況へ移行可能か否かについてあらかじめ審査を行い、このことについて見通しを得ておく必要がある。

I.適用対象

本基本的考え方は、廃棄物埋設事業として、原子炉施設の運転等に伴って発生する低レベル放射性固体廃棄物のうち、容器に固型化等の処理したものを人工構築物を設置した廃棄物埋設施設に浅地中処分する場合(以下、「人工構築物を設置した廃棄物埋設施設に埋設する場合」という。)及び容器に固型化しない放射性コンクリート廃棄物(以下、「非固型化コンクリート等廃棄物」という。)を人工構築物を設置しない廃棄物埋設施設に浅地中処分する場合(以下、「人工構築物を設置しない廃棄物埋設施設に埋設する場合」という。)で、その管理を段階的に軽減して行う最終的な処分について適用する。

〈解説〉
適用対象について
「原子炉施設の運転等に伴って発生する低レベル放射性固体廃棄物」とは、原子炉の運転及び保守管理、原子炉の附属施設である廃棄施設における廃棄物の処理等に伴って発生する低レベル放射性固体廃棄物をいい、原子炉施設の解体に伴って発生するものを含む。
また、「非固型化コンクリート等廃棄物」とは、コンクリート及び鉄筋その他これに類するものを含むものをいう。

II.用語

本基本的考え方において使用する用語の意義は、次のとおりである。 (1)廃棄物埋設地 廃棄物を埋設するために又は人工バリアを設置するために土地を掘削した場所、及び廃棄物を埋設し、埋め戻した場所をいう。なお、人工バリアを設置する場所は、その人工バリアを含む。 (2)廃棄物埋設施設 廃棄物埋設地及びその附属施設をいい、附属施設としては、廃棄物受入れ施設、放射線管理施設等がある。 段階管理とは、一般公衆の線量当量を合理的に達成出来る限り低く抑えるため、浅地中に埋設した廃棄物の放射能が時間の経過に伴って低減し放射能レベルが安全上支障のないレベル以下になるまでの間、廃棄物の種類、放射能レベル等に応じて廃棄物埋設地の管理を行うことをいう。 その管理の内容は、埋設処分する廃棄物の形態、廃棄物中に含まれる放射性物質の種類及び放射能濃度、人工構築物の設置の有無等に応じて異なり、それぞれ基本的に以下に示すようなものである。 (i)人工構築物を設置した廃棄物埋設施設に埋設する場合 1)第1段階 人工バリアにより放射性物質が人工バリアの外へ漏出することを防止するとともに、人工バリアから放射性物質が漏出していないことを監視する必要がある段階をいう。 2)第2段階 人工バリアと天然バリアにより放射性物質の生活環境への移行を抑制するとともに、放射性物質の人工バリアからの漏出及び生活環境への移行を監視する必要がある段階をいう。 3)第3段階 主として天然バリアにより放射性物質の生活環境への移行を抑制するとともに特定の行為の禁止又は制約をするための措置を講じる必要がある段階をいう。 (ii) 人工構築物を設置しない廃棄物埋設施設に埋設する場合 1)埋設段階 放射性物質の生活環境への移行を抑制するとともに、放射性物質の廃棄物埋設地から生活環境への移行を監視する必要がある段階をいう。 2)保全段階 天然バリアにより放射性物質の生活環境への移行を抑制するとともに、特定の行為の禁止又は制約をするための措置を講じる必要がある段階をいう。

〈解説〉
用語について
(1) 本基本的考え方において使用した「人工バリア」とは、埋設された廃棄物から生活環境への放射性物質の漏出の防止及び低減を期待して設けられるコンクリートピット(廃棄物を埋設するに当たり、その空隙の充填に用いる土砂等の充填材を含む。)、廃棄物を一体的に固型化して埋設するいわゆるモノリス等の人工構築物をいう。
また、廃棄物を容器に固型化する場合に使用する固型化材料及び容器を含む。
(2) 本基本的考え方において使用した「天然バリア」とは、人工構築物又は埋設された廃棄物の周囲に存在し、埋設された廃棄物から漏出してきた放射性物質の生活環境への移行の抑制等が期待できるような土壌等をいう。

III.基本的立地条件

廃棄物埋設施設の敷地及びその周辺において、大きな事故の誘因となる事象が起こるとは考えられないこと。また、万一、事故が発生した場合において、その影響を拡大するような事象も少ないこと。

〈解説〉
基本的立地条件について
大きな事故の誘因を排除し、また、万一事故が発生した場合における影響の拡大を防止する観点から、廃棄物埋設施設の敷地及びその周辺における以下のような事象を考慮して、安全確保上支障がないことを確認する必要がある。
(1) 自然現象
(i) 地震、津波、地すべり、陥没、台風、高潮、洪水、異常寒波、豪雪等の自然現象
(ii) 地盤、地耐力、断層等の地質及び地形等
(iv) 風向、風速、降水量等の気象
河川、地下水等の水象、及び水理
(2) 社会環境
(i)近接工場等における火災、爆発等
(ii)河川水、地下水等の利用状況、農業、畜産業、漁業等の食物に関する土地利用等の状況及び人口分布等
(iii)石炭、鉱石等の天然資源

IV.線量当量評価

4-1 平常時評価 平常時における一般公衆の線量当量は、段階管理の計画、廃棄物埋設施設の設計並びに敷地及びその周辺の状況との関連において、合理的に達成できる限り低いものであること。 4-2 安全評価 技術的にみて想定される異常事象が発生するとした場合、一般公衆に対し、過度の放射線被ばくを及ぼさないこと。

〈解説〉
線量当量評価について
(1)平常時評価
平常時における廃棄物埋設地からの放射性物質の漏出又は移行、廃棄物埋設地の附属施設からの放射性気体廃棄物及び放射性液体廃棄物の放出等に伴う一般公衆の線量当量が、法令に定める線量当量限度を超えないことはもとより、合理的に達成できる限り低いことを段階管理の計画、設計並びに敷地及びその周辺の状況との関連において評価する。
(2)安全評価
(i)廃棄物埋設地については、事業の長期性に鑑み、平常時評価において考慮した事象を超えるような事象が仮に発生するとしても一般公衆に対し安全上支障がないことを確認するため、廃棄物埋設地からの放射性物質の異常な漏出又は移行を技術的見地から仮定して一般公衆の線量当量を評価する。
(ii)廃棄物埋設地の附属施設については、以下のような事故の発生の可能性を検討し、一般公衆の被ばくの観点から重要と思われる事故を選定して一般公衆の線量当量を評価する。
a.誤操作による廃棄物の落下等に伴う放射性物質の飛散
b.配管等の破損、各種機器の故障等による放射性物質の漏出
c.火災等
(3)線量当量の評価に当たっては、事故発生後、その影響を緩和するための対策が講じられる場合は異常を検知するまでの時間、作業に要する時間等を適切に考慮し、事故が収束するまでの間に漏出若しくは移行し、又は放出された放射性物質等により発生するおそれのある一般公衆の線量当量を評価するものとする。
(4)一般公衆に対して、過度の放射線被ばくを及ぼさないこと」とは、事故等の発生頻度との兼ね合いを考慮して判断しようとするものであり、判断基準は、「一般公衆に対して著しい放射線被ばくのリスクを与えないこと」とするが、その具体的な運用に当たっては、ICRP勧告(1977年)及びパリ声明による公衆の構成員に関する実効線量当量限度を超えなければ「リスク」は小さいものと判断する。

V.放射線管理

5-1 閉じ込めの機能 人工構築物を設置した廃棄物埋設施設に埋設する場合においては、第一段階において放射性物質を廃棄物埋設地の限定された区域に閉じ込める機能を有する設計であること。 5-2 移行抑制 人工構築物を設置しない廃棄物埋設施設に埋設する場合においては、埋設段階において放射性物質の廃棄物埋設地から生活環境への移行抑制を考慮した適切な対策が講じられていること。 5-3 放射線防護 (1)廃棄物埋設施設は、 直接ガンマ線及びスカイシャインガンマ線による一般公衆の線量当量が合理的に達成できる限り低くできるように放射線しゃへいがなされていること。 (2)人工構築物を設置しない廃棄物埋設施設に埋設する場合は、放射性物質の飛散の可能性がある場合はこれによる一般公衆の線量当量が、合理的に達成できる限り低くできるように対策が講じられていること。 (3)廃棄物埋設施設においては、放射線業務従事者の作業条件を考慮して、適切な放射線しゃへい、換気等がなされていること。 5-4 放射線被ばく管理 廃棄物埋設施設においては、放射線業務従事者の線量当量を十分に監視し、管理するための対象が講じられていること。

〈解説〉
放射線管理について
「埋設段階」とは、埋設作業開始時から覆土が安定するまでの期間とする。

VI.環境安全

廃棄物埋設施設においては、廃棄物埋設地の附属施設から発生する放射性気体廃棄物及び放射性液体廃棄物を適切に処理する等により、周辺環境に放出する放射性物質の濃度等を合理的に達成できる限り低くできるようになっていること。 6-2 放射線監視 (1)廃棄物埋設施設においては、廃棄物埋設地の附属施設から放出する放射性気体廃棄物及び放射性液体廃棄物の放出の経路における放射性物質の濃度等を適切に監視するための対策が講じられていること。

VII.その他の安全対策

7-1 地震に対する設計上の考慮 廃棄物埋設施設は、設計地震力に対して、適切な期間安全上要求される機能を損なわない設計であること。この設計地震力は、「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」における耐震設計上の重要度分類のCクラスの施設に対応するものとして定めること。 7-2 地震以外の自然現象に対する設計上の考慮 廃棄物埋設施設は、敷地及びその周辺における過去の記録、現地調査等を参照して、予想される地震以外の自然現象を考慮して適切な期間安全上要求される機能を損なわない設計であること。 7-3 火災・爆発に対する考慮 廃棄物埋設施設においては、火災・爆発の発生を防止し、かつ、万一の火災・爆発時にも施設外への放射性物質の放出が過大とならないための適切な対策が講じられていること。 7-4 電源喪失に対する考慮 廃棄物埋設地の附属施設においては、外部電源系の機能喪失に対応した適切な対策が講じられていること。 7-5 準拠規格及び基準 廃棄物埋設施設の設計、工事等については、適切と認められる規格及び基準によるものであること。

〈解説〉
地震及び地震以外の自然現象に対する設計上の考慮について
「適切な期間」とは、廃棄物埋設地にあっては第1段階の期間とし、廃棄物埋設地の附属施設にあっては廃棄物埋設事業を適切に進めるうえで必要とされる期間とする。
また、「安全上要求される機能を損なわない」とは、廃棄物埋設地にあっては、閉じ込め機能等が失われないこととする。

VIII.管理期間の終了

被ばく管理の観点から行う廃棄物埋設地の管理は、有意な期間内に終了し得るとともに、管理期間終了以後において、埋設した廃棄物に起因して発生すると想定される一般公衆の線量当量は、被ばく管理の観点からは管理することを必要としない低い線量であること。

〈解説〉
管理期間の終了について
(1)人工構築物を設置した廃棄物埋設施設に埋設する場合は、原子炉施設から発生する廃棄物中に含まれる放射性物質のうち、放射能量が多く、廃棄物埋設施設の放射線防護上重要なコバルト60、セシウム137等は、300年~400年経過すれば一千分の一から一万分の一以下に減衰しこれらの放射能量は極めて少なくなることや、外国における例も参考として、「有意な期間」としては、300年~400年をめやすとして用いることとする。
また、人工構築物を設置しない廃棄物埋設施設に埋設する場合は、もともと放射能レベルの低い非固型化コンクリート等廃棄物を埋設対象としているため、「有意な期間」としては、埋設段階及びその後の50年程度の保全段階をめやすとして用いることとする。
(2)「被ばく管理の観点からは管理することを必要としない低い線量」とは、線量当量の評価値が放射線審議会基本部会報告「放射性固体廃棄物の浅地中処分における規制除外線量について」(昭和62年12月)に示された規制除外線量である10マイクロシーベルト/年を超えないことをめやすとする。
なお、発生頻度が小さいと考えられる事象については、線量当量の評価値が10マイクロシーベルト/年を著しく超えないことをめやすとする。